人工透析治療の種類

人工透析を受けることになると、治療の種類や特徴など気になるものです。「血液透析と腹膜透析にはどんな違いがあるの?」「それぞれの透析療法の特徴を知りたい」と考えている方もいることでしょう。

透析療法には、「血液透析」と「腹膜透析」の2種類の方法があり、患者様の状態や検査データによって透析方法が決められます。

当記事では、血液透析と腹膜透析の仕組みや特徴について詳しく説明しているので、人工透析について情報を集めている方はぜひ参考にしてください。

血液透析

血液透析とは、血液をろ過する体外の装置を用いてきれいにする治療法のことを指します。血液透析は、以下の3つに分けられます。

  • 血液透析(HD)
  • 血液ろ過(HF)
  • 血液ろ過透析(オンラインHDF)
  • 透析治療にはさまざまな種類がありますが、患者様の状態や検査データなどを考慮して方針を決定していきます。

    血液透析(HD)

    自分の腎臓の代わりにダイアライザーと呼ばれるフィルターを用いて、血中から余分な水分や老廃物を取り除く治療のことを言います。老廃物などが除去されてきれいになった血液は体内に戻されます。血液透析を実施する際、血液を体外に導き出してきれいにするため、腕の動脈と静脈をつなぐシャントが必要です。

    透析を受けている患者様のうち97%が血液透析を受けていると言われています。血液透析は、透析を実施している医療機関に週3回通い、1回4時間ほどの治療を受けます。

    血液濾過(HF)

    限外ろ過圧を用いることによって、透析器と同じ構造をしたヘモフィルターと呼ばれる血液ろ過器から、血中の余分な水分や老廃物、電解質をろ液として取り除く治療です。

    取り除いたろ液の代わりに、透析液に似た成分の補充液を回路から血中に注入します。補充液は血中に直接入れるため、点滴と同様にきれいな薬剤です。ろ液として除去する量は、1回の治療で体重の1/3以上と言われています。

     

    血液透析と比べて、体内に蓄積した大きな物質の除去に優れていますが、小さな不要物の除去能力は劣るとされています。また血液透析と比較すると血圧低下を起こしにくいことから、透析困難症や心臓に障害のある方、緑内障、透析アミロイド症などと診断された患者様の治療に適しています。

    ※透析困難症とは、血液透析を行うと血圧低下などの症状が見られることを言います。

    血液濾過透析(オンラインHDF)

    血液透析にろ過をプラスした治療法のことを指し、オンラインHDFとオフラインHDFに分類されます。オンラインHDFは、従来実施されてきた透析やオフラインHDFと比較して、非常に多くの老廃物を除去できるようになったと言われています。

    オンラインHDFの場合、補充液を24~48リットル投入可能であるのに対して、オフラインHDFでは8~10リットルほどの投入が可能です。

    オンラインHDFは血液透析(HD)と比べると、以下のメリットが期待できます。

    • 食欲が増加しやすい
    • 血圧の安定化を目指せる
    • 貧血の改善につながる
    • 老廃物を除去しやすい
    • 心臓へかかる負担の軽減につながる

    腹膜透析(CAPD・APD)

    腹膜透析には、CAPDとAPDという2種類があります。

    腹膜とは、肝臓や胃、腸など臓器の表面や腹壁の内側を覆う膜のことであり、膜に囲まれている部位を腹腔と言います。腹腔の中に決められた時間透析液を入れておくと、腹膜から血中の老廃物や余分な水分などが腹腔内にある透析液側に移っていくのです。余分な水分や老廃物が透析液にしっかりと移った時点で、体外に透析液を取り出すときれいになります。

    CAPD(持続携帯式腹膜透析)

    1日に3~5回ほど透析液の交換を実施します。1回の交換に必要な時間は30分ほどで、朝や昼、就寝前など自分の生活リズムに合わせて、患者様やご家族が交換を行います。

    連続して実施されるので、血液透析と比較すると身体にかかる負担が少なくて済み、残っている腎機能を長期間保ちやすい治療法であるといわれています。自宅や勤務先で実施でき、貯留中は自由に過ごせるのが大きなメリットでしょう。

    バッグの交換作業は、適切に環境を整えられる条件下であれば、旅行中でも可能です。毎日のバッグ交換の排液量や除水量、性状、時間などの情報や体重と血圧をノートに記録しておくことが重要です。バッグ交換の回数については、患者の体調や腹膜の機能によって主治医が決定します。

    APD(自動腹膜透析)

    APDは、主に寝ている時間を使って自動的に透析液の交換を実施します。この治療方法は日中の自由に過ごせる時間を多く確保するために開発された方法だと言われているのです。毎日通学や通勤が必要な学生や社会人など、日中忙しい方で腹膜透析を受けている患者の約4割の方がAPDを取り入れているそうです。

    CAPDと血液透析の違い

    CAPD 血液透析
    透析方法や症状 透析場所 自宅・職場など 病院・医院
    透析時間 1日3~5回/日の交換が必要、交換時間以外は連続的に透析を実施 週3回・1回4~5時間
    透析に伴う苦痛 カテーテルによる刺激やお腹の張り 針を刺すときの痛み
    合併症 腹膜炎・カテーテル出口部感染、肥満、脂質異常症など 血圧低下や嘔気・嘔吐、終了後の疲労、シャントの閉塞など
    身体にかかる負担 連続的に透析をするため負担になりにくい 短時間で老廃物を除去するため負担になりやすい
    日常生活 通院頻度 月に1~2回受診が必要 週3回透析に通う・透析中はベッド上で過ごす
    旅行
    スポーツ
    必要物品をそろえる
    腹圧のかかる激しいスポーツや水泳はNG
    長期間の場合、目的地付近の医療機関で予約が必要
    シャント部分に注意
    食事制限 血液透析より制限が緩やか(長い間続けるため食事のコントロールが必須) 制限が厳しい(塩分や水分、カリウム、リン制限が必要)

    血液透析と腹膜透析のメリットとデメリット

    各治療法には、さまざまなメリット・デメリットがあります。それぞれの特徴をしっかりと把握して、疑問点などがある方は主治医に確認してみると良いでしょう。

    血液透析

    血液透析は医療機関を訪れて透析を受けるので、医療スタッフにやってもらえるのが特徴で、生活のメリハリをつけやすい点はメリットと言えます。

    しかし、穿刺に痛みを伴う点や腹膜透析よりも食事制限が厳しいことなどがデメリットに挙げられます。

    腹膜透析

    腹膜透析の場合、血液透析のように頻繁に通院する必要がなく、仕事など日中の用事と両立しやすい点がメリットです。残っている腎機能を保ちやすく、合併症の発症を抑えやすい点もメリットとして挙げられます。

    しかし、血液透析と比較すると除去できる水分や老廃物が少ないので、この透析方法だけを続けていると腹膜が劣化しやすくなってしまいます。そのため、いずれは血液透析に移行しなければならないというのがデメリットです。