人工透析でよくある「シャントトラブル」。どのようなトラブルがあるのか、詳しく解説していきます。またシャントトラブルを未然に防ぐための取り組みに対応する東京の病院についてもいくつか、ご紹介します。
そもそもシャントとはなにか?というと、これは人工血管のことです。透析のためには大量の血液を透析器に移動させ、キレイな状態にしてから身体に返す必要があります。
一般的に血液透析を行うには、1分間に200ml前後の血液を体外に流し続けなければいけません。そうして体外へ流された血液は、いったん透析器内で不要成分を取り除く洗浄作業がなされ、キレイな血液になってから再び体内へ戻ってきます。
ですが、これだけの血液量を取り出し、再び静脈へ戻すには点滴レベルの針を血管に刺すのでは不十分なのです。そのための取り出し口としてバスキュラーアクセスというものが作られ、その中で動脈と静脈を直接つないでたくさん血液が通るようにした血管のことを内シャントと呼ぶのです。
この内シャントは、トラブル発生リスクが小さく穿刺範囲が確保しやすいとされる、「利き腕ではない前腕の手首そば」もしくは「親指の付け根」に設置されることが一般的。作成は局所麻酔を使って1~2時間程度の手術で完了します。
シャントトラブルとは、この人工血管の中に何らかのトラブルが発生した状態ということです。具体的には、血栓ができて血管内が狭くなってしまうトラブルが代表的です。
他にもかゆみや血管痛、むくみなども発生しやすいシャントトラブルだといえるでしょう。
血液透析を行う期間が長くなればなるほど、トラブルのリスクは高まります。注意が必要なトラブルについて、以下でご紹介します。
シャントの長期使用によって、シャントが狭窄(狭くなること)や閉塞(詰まること)を引き起こすリスクが高まります。このトラブルの兆候は以下の通りですので、日ごろから注意しておくと良いでしょう。
シャントは血液透析を受けている方の命綱ともいえます。このような症状が得た場合、すぐに担当医の診察を受けて、適切な治療を受けましょう。
シャント側の静脈が閉塞して圧が高くなると、血液が身体の中心に流れにくくなり、手指の方向に逆流することでうっ血状態に。するとシャント側の腕全体や手指が腫れ上がってしまいます。これが静脈高血圧症です。
症状が腕全体に出ると強い痛みや重だるさが続きます。また手指が腫れると物を握ることが難しくなるため、日常生活にかなり支障が出てきます。
静脈高血圧症を放置すると皮膚に深刻なびらんが生じ、QOL(生活の質)が大きく下がってしまうため、必ずシャントトラブルに詳しい医師の治療を受けましょう。
シャント静脈に流れこむ血液が多すぎると、指先へ向かう動脈内の血流が一時的に少なくなります。適切に調整することで動脈の血流は回復しますが、患者さんに動脈硬化など何らかの病変がある場合、動脈の血流がうまく回復せず、本来指先まで届くはずだった血液が十分に届かなくなってしまいます。
この状態が継続すると、代謝に必要な栄養や酸素が欠乏し、スチール症候群に罹ってしまうことがあります。特にシャントを作成した直後は動脈内の血流が大きく変化し、スチール症候群を発症する可能性が高くなるので注意しましょう。
症状としては、
など。症状が進むと、指先が壊死してしまうこともあります。
また、シャントによる血液透析を習慣的に受けるようになると、シャントだけでなく、通常の血管にも狭窄が見られることがあります。中でもシャントの上流血管部分に狭窄症状が出ると、「静脈瘤」が起こる場合があります。
静脈瘤の特徴は、血液が停滞したり逆流を起こしたりして、腕に大きな腫れが生じることです。狭窄が心臓により近い部分で生じた場合、首や顔が腫れることもあります。静脈瘤が大きくなりすぎると、破裂してしまう危険性が高まるため、静脈瘤が見られたら状態をよく観察しておくことが大切です。
シャントが細菌などによる感染症を起こすと、その部分が赤くなって痛みと腫れが出てきます。また化膿が進めば膿も出てくるようになります。
これは穿刺の場所が毎回同じところになっている場合や、シャントの衛生管理が不十分な場合に生じます。放置しておくと患部から大出血が発生したり、体中に感染が広がるリスクがあります。
シャント内に流れの悪い場所があったり、同じ場所に穿刺を繰り返したりすると、一部分に血液の圧がかかりシャントに瘤(コブ)が生じることがあります。
小さい場合には特に問題ありませんが、
といった場合には、放置すると瘤が破裂してしまう危険もあるので、早めに担当医に相談しましょう。
動脈から脱血した血液は、ダイアライザー(人工腎臓)で浄化された後、静脈シャントを通じて体内に戻されます。その際、何らかの原因で一部の血液が再び動脈から脱血し、ダイアライザーで浄化されるという循環を繰り返してしまう場合があります。これが再循環(リサーキュレーション)です。
再循環が起きる原因としては、シャント狭窄や穿刺時の不手際などがあります。再循環を放置すると透析の効率が下がり、透析時間の延長など余計な負担が患者さんにかかるので、適切なモニタリングが欠かせません。
モニタリングの方法としては、(1)透析中にシャント静脈から生理食塩水を注入し、動脈の血液が薄くなるかを目視する方法、(2)シャント側と反対側、両方の腕から採血し、クレアチニンや尿素窒素などの成分値を測定する方法があります。
シャントトラブルが発生した場合は、自分で対処する事はできないため、治療を受けなければなりません。
ただ、無用なシャントトラブルを防ぐため、患者さん自身にできることもあります。
患者さんが自分のシャントを常にチェックすることで、シャントトラブルが重症化する前に異変に気づくことも可能です。チェック方法は「視る」「触る」「聴く」「持ち上げる」の4つです。
シャントの瘤自体はありふれているので、たとえ毎日視ていても「異常な瘤かどうか」が判別しにくいことがあります。そこでおすすめなのが写真撮影です。定期的にシャント側の腕をカメラで撮影して画像を比較すれば、瘤の変化が一目瞭然となります。
シャントを指で触ると、勢いのある血流(ざわざわする感じ)がわかります。ところが、狭窄がある場合は「トントン」というような拍動を感じるはずです。また、指で押したときに硬くてへこまない場合は、血栓によって血管が石灰化している可能性があります。
聴診器を持っている患者さんは、シャント部位の音を聴くことで血管の状態をある程度確認できます。「ザー、ゴー」といった大きくて川の流れのような音なら正常です。しかし「ザッザッザッ」という短く途切れるような音なら血管に狭窄があるかもしれません。
横になり、シャント側の腕を少しずつ持ち上げます。いつもふくらんでいるはずのシャント静脈がへこめば正常です。ところが、もし血管に大きな狭窄があると、シャント静脈内の血流がとどこおるため、腕を持ち上げても血管はへこまず、ふくらんだままです。
シャントトラブルが発症するかどうかは、個々の血管の状態や免疫力などによっても変わってきます。普段の健康管理にも十分に気を付け、特にストレスの緩和と良好な食生活を心がけることでシャントトラブルへの耐性が高まるでしょう。
シャントトラブルが発生した場合、まずは検査が行われます。続いて手術です。基本的に日帰り手術となるでしょう。
シャント狭窄の治療では、バルーンと呼ばれるものを使った拡張術・経皮的血管形成術(PTA)が行われることが一般的です。風船を付けたカテーテルで狭くなった部分を広げます。手術に必要な時間は30分~1時間程度。
PTAで狭窄が改善しない場合は、外科手術でシャントの再生を行いますが、再生が難しい場合は新たなシャントを再建します。
閉塞では、詰まっている血栓を溶解させる治療法や、血栓除去手術を行います。これらの治療自体はそれ程大変なものではありません。術後はしばらく休憩をしてからシャント音を確認、問題がなければ帰宅できます。
治療は保険が適用となるため、3割負担でだいたい5~6万円程度となるでしょう。
ただし、症状によってはPTAやシャント自体を取り替える再建治療を施すこともあります。
短期間で急速に肥大したものや、圧が強くかかっており硬いものなどは、破裂のリスクが高いため、瘤を取り去り残った血管同士をつなぐ外科手術が行われます。
シャントの血流を意図的に減らすことで動脈の血流を改善させます。それでも症状が軽減しない場合は、シャントを一度閉鎖し、新しいシャントを作成します。
人工血管が感染症を起こした場合は、手術により人工血管を切除することが一般的です。
ここでは、シャントトラブルを未然に防ぐ取り組みをする東京都内のクリニックをいくつかご紹介します。
【シャント外来もあるクリニック】
バスキュラーアクセスの日帰り手術を可能としているのが大きな特徴です。また、シャントトラブルを防ぐためには、なにか異常があった時にすぐに適切な診療を受けることが大切。予約制ではありますが、シャント外来では状態確認の相談なども受け付けてもらえます。
【トラブルを未然に防ぐことが可能】
シャントトラブルが発生した場合、適切な対応をしてくれます。それだけでなく、バスキュラーアクセスの治療の他にもトラブルを未然に防ぐための治療も行っているため、実際にトラブルが発生してから対応するのではなく、予防のための対策を取るのにも役立ってくれるでしょう。
【日帰りでの治療に対応】
日帰りでのシャント手術の他、内シャントの新設やシャント不全の緊急トラブルにもしっかり対応してくれます。しかも、日帰り手術での対応が可能であるため、なかなか時間が取れない方でも利用しやすいでしょう。トラブルを未然に防ぐための定期検診なども行っています。
【シャントトラブルを予防するクリーンな透析液】
シャントトラブルを防ぐには、不純物のない透析液であることが重要です。当クリニックではこだわりの透析薬剤精製システムで常にクリーンな透析液を確保。透析中も監視装置で定期的に透析液をチェックするので、透析アミロイド症や動脈硬化などを引き起こすエンドトキシンも残留させません。
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