人工透析と合併症

当記事では、人工透析で見られやすい合併症についてまとめるとともに、それぞれの症状や対処法などについて説明しています。人工透析の情報を集めている方は、ぜひ参考にしてください。

血液透析・腹膜透析の合併症

腎性貧血(血圧変動)

特徴や症状

腎不全になると、腎臓で作られているエリスロポエチンというホルモンの分泌が低下することによって貧血になります。また、血中の尿毒素が増加して出血しやすくなったり、赤血球の寿命が短くなったりすることも原因と言われています。

腎臓と血圧は密接に関係しており、腎機能が低下すると高血圧になることがあります。腎性貧血の症状は、階段の上り下りのときの息切れや動悸などが見られたり、疲れやすさ、手足のだるさが現れたりします。

対処

エリスロポエチンや鉄剤の注射などを用いると改善が期待できます。また、十分な透析を行い、栄養バランスに気をつけた食事、適度に運動などを心がけて予防することも重要です。

腎性骨異栄養症

特徴や症状

腎機能が低下すると、ビタミンDの活性化が障害されることによって、腸管からカルシウムの吸収が低下しやすくなります。血中カルシウムを保つために副甲状腺ホルモンがたくさん出ることによって、骨からカルシウムが減少していくのです。透析を行っている方に見られやすい症状だと言われています。

対処

活性型ビタミンDを投与したり、血中のリンを下げる薬を用いたりします。

透析アミロイドーシス

特徴や症状

透析アミロイド―シスは、透析する期間が長くなればなるほど発症するリスクが高まる合併症の1つです。一般的には透析治療を10年以上続けている患者様に多くみられます。

骨や関節に症状がみられ、手足のしびれや痛みが生じます。進行すると日常生活に支障をきたすようになります。透析アミロイドーシスではアミロイドという成分が骨や関節に沈着し、関節のしびれや痛み、変形、運動障害がみられるようになり、手根管症候群や多関節痛などをきたします。

対処法

透析アミロイド―シスには根本的な治療方法はなく、非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)を使用したり、リハビリが行われたりします。

動脈硬化・石灰化症

特徴や症状

透析を受けている方にとって動脈硬化は注意しなければいけない合併症です。動脈硬化は、生活習慣や高血圧・糖尿病などが原因で起きます。透析を受けている方におこる動脈硬化では、血中のリンやカルシウムの濃度が原因で発症しやすくなるのです。

体に吸収されたリンは腎臓から尿の中に排出され、調節されています。しかし、腎機能が低下していると、リンを排出する量が減ることで血中のリンの濃度が高くなります。

体の中のリンとカルシウムのバランスが崩れると、血管の壁などでリンとカルシウムが結合して石灰化を起こして動脈硬化が起きやすくなります。

対処法

高血圧や糖尿病、脂質異常症などがある方は、医師の指示に従って治療を継続しましょう。なるべく体を動かして血流を良くしたり、食生活の見直しを行ったりすることが重要です。運動量や内容については主治医に確認しましょう。

食事は、魚介類や乳製品、大豆製品、清涼飲料水、アルコール、インスタント食品などのリンを豊富に含有する食品の摂り方に注意していく必要があります。

心不全・肺水腫

透析を受けている方は腎機能が低下しているため、体内の血液量が増え心臓に負担がかかりやすいです。また、動脈硬化が進んで虚血性心疾患になりやすく、心不全の状態になっている方も多く見られます。

高血圧や糖尿病のある透析患者は、心不全を起こしやすく、肺に水がたまる心原性肺水腫を引き起こしやすいため、十分注意しなければなりません。

対処法

透析と透析の間に水分や塩分を摂取しすぎると、体重が急激に増加して心臓へ負担がかかりやすくなります。透析を受けている方が心不全や肺水腫を予防するためには水分管理をしっかりと行っていくことが重要です。

感染症

特徴や症状

透析を受けている方は、健康な人と比較すると、免疫機能が低下しているため感染症にかかるリスクが高く、重症化しやすいです。

かかりやすい主な感染症は以下の通りです。

  • 肺炎
  • 尿路感染症
  • 血液透析の場合:シャント感染
  • 腹膜透析の場合:腹膜炎・カテーテル関連感染症

対処法

予防していくためには、十分な透析を受けるのはもちろん、栄養バランスのとれた食事や休息を心がけましょう。外出後は手洗いやうがいをしっかりと行うことが重要です。日頃からシャント穿刺部やカテーテル出口部を清潔に保つようにしてください。

悪性腫瘍

特徴や症状

透析を受けている方は健康な人と比較すると、悪性腫瘍の発生のリスクが高いとされています。その原因に、尿毒素によって免疫が低下していること、尿毒症物質の中の一部に発癌作用があることなどが挙げられます。

対処法

年に1回などの頻度で、胸部・腹部CT、胃カメラなどの検査を実施して、早期発見につなげます。また、便潜血が見られた場合には大腸カメラを実施します。

不均衡症候群

特徴や症状

この合併症は、透析導入期に見られやすいです。症状は透析中から透析終了後12時間以内に頭痛や吐き気、嘔吐などが見られるとされています。

透析によって血中の尿毒素は除去されますが、尿毒素が除かれにくい脳との間に濃度差が生じることによって起こると言われています。

対処

血液透析の時間や回数を調整したり、薬物療法で症状を軽減したりする方法があります。透析後はなるべく安静に保つことも有効です。

出血傾向

特徴や症状

透析では血液を身体から取り出すので、血液が固まってしまわないように抗凝固薬を用います。透析治療を終えた後も薬の作用が残り、出血しやすくなるため注意しなければなりません。手術や抜歯など、出血を伴う治療は透析日以外の日で調整する必要があります。

対処

腎不全になると、血小板の働きが低下することがあり、健康な方より出血しやすい状傾向があるので注意しなければなりません。

出血を伴う治療(抜歯や手術など)が必要な場合、透析日以外の日で調整が必要です。

シャント・トラブル

特徴や症状

透析治療は週3回ほど実施が必要であり、治療のたびに大量の血液が出入ります。血液の出入り口であるバスキュラーアクセスに用いられる血管はさまざまなトラブルが起こりやすいため注意が必要です。

主なトラブルには、狭窄や閉塞、感染、腫れなどが挙げられます。

対処

シャントトラブルは早期に発見して、対処することが重要です。医療従事者に任せっぱなしにせず、ちょっとした違和感や普段と違うなど、気になることがある場合、速やかに相談しましょう。

かゆみ

特徴や症状

工透析治療を受けていると、皮膚が乾燥しやすくなります。特に角質の水分を保持する能力が低下し、シャント部分や全身が乾燥しやすくなるのです。

その他には、皮膚に老廃物が蓄積することによってかゆみを引き起こしたり、アレルギーや薬剤が原因になったりすることがあります。

対処法

肌が乾燥していると、かゆみを引き起こしやすくなるため、入浴後に保湿を心がけましょう。アレルギーが原因の場合、ステロイド外用剤を用いるケースもあります。